川村元気『世界から猫が消えたなら』大切なものはなくなって初めて気づく
- 作者: 川村元気
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/09/18
- メディア: 文庫
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川村元気原作の小説で、映画化もされて有名な作品。川村元気といえば、映画プロデュースのヒットメーカーだ。小説も当然のように面白い。
毎作、何かテーマがあって、登場人物たちは悲しみとおかしさと、気付きを得て進んでいく。
今作では、ある日、僕は脳腫瘍の診断を受け、余命宣告されるところから物語が始まる。
その夜、悪魔が現れ、もし死にたくなかったら、大切なものを一つずつ消していくと言う。
僕は徐々に消える大切なものを前に、過去の自分と向き合っていく。
家族、恋人、そして猫。
僕の行き着く先にあるものを読者は一緒に見つけることになり、どこか旅をしてきたような感慨もある。
普遍的な、大切なものはなくして初めて気づくというテーマで、締め付けられる素敵な物語に浸ってほしい。
価格:682円 |
辻村深月『水底フェスタ』黒辻村を堪能できる
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/08/06
- メディア: 文庫
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辻村作品はよく黒辻村と白辻村とに分けられることがある。
おそらく感動できてとてもきれいな物語とドロドロの関係性を描いた物語とで分かれることは想像できるが、それであればこの『水底フェスタ』は完全なる真っ黒辻村である。
過疎地で育った少年が、あるとき村に復習するために返ってきたと言う少女と出会う。
フェスを行うことをウリとしてしている田舎町で、少年は少女の魅惑に虜となっていく。
今後も辻村作品では都会と田舎の対比や、女性の性などテーマをもった作品が多くなる先駆けとなった作品に感じる。
辻村ファンとしてはまさかの性描写など驚くようなこともあるけれど、やはり読ませてしまう力がある。
この閉塞感を感じてほしい。
価格:756円 |
村田沙耶香『コンビニ人間』適合と不適合の狭間で
- 作者: 村田沙耶香
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2018/09/04
- メディア: 文庫
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第155回芥川賞の受賞作品。
コンビニで働くことで自身が存在することを確認できる女性の話と、一言で言えなくはないのだが、この多様性が認められつつ世間でもなお、生きづらさを描いている。
直木賞とは異なり芥川賞は、どこか近より難さがあるも思われるが、これは安心してほしい。
読んで思うことは、自分の居場所がわかることは幸せだということだ。
そして、その反対に自身の能力が分からず、ずっと追い求めてしまうことの怖さを考えるとぞっとする。
読みやすさとは反比例するくらい考えさせる一冊だ。
価格:626円 |
小野不由美『十二国記 黄昏の岸 暁の天』新作の前に大いなる決意と感動を
- 作者: 小野不由美,山田章博
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/03/28
- メディア: 文庫
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各国の王と麒麟が協力する十二国はじめての取り組みに心が踊る。
2019年の新作に向けて改めて読む方も多いだろう。とにかく成長した慶国の陽子や、はじめての各国の王と麒麟にファンは歓喜したであろう。
当時から相当な年月を経て描かれる戴国の状況は。この巻を読まなければならない。
十二国の摂理、抗うことのできない天意。
そのなかでどうにかしようとする登場人物たちの気持ちだけでなく、取り巻く真っ当な人々の想いまでもが胸に刺さりまくる。
隻腕の将軍と力を持たない麒麟が自国でできることは何か。それがついに明かされるであろう新作が待ちきれない。
絶対に読んでおく必要がある。
価格:766円 |
宮部みゆき『名もなき毒』宮部作品の真髄を見よ!
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/12/06
- メディア: 文庫
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杉村シリーズの2作目として、今回もボリューミーな内容となっている。
杉村の部署にたちの悪いクレーマー社員がいたが退職による対応窓口として杉村が引き受けることになる。それは人の見えない毒を感じるようなことになる。
一方で杉村は連続毒殺事件にも関わり、のちに影響を受けることになる私立探偵の北見と知り合う。今後のシリーズの重要なポイントの一つとなる作品だ。
理解いただけないかもしれないが、この杉村シリーズは三島由紀夫の作品を読んだあとのような読後感を感じる。
杉村と義父の間には信頼というのとは少し違うのだが心地よい関係性がある。
二人で話すシーンが今回もあるのだが、なぜかそれが静謐な空気感を行間から醸し出している。
圧倒的な存在としても描かれる義父とのコミュニケーションのなかにも杉村の意志が感じられる。
最高の二人のやり取りをぜひ読んでほしい。
価格:972円 |
辻村深月『東京會舘とわたし 上巻』建物の歴史と人々の営み
- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2019/09/03
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実在する東京會舘を舞台に、戦前から現代までの働く人や式典や行事に関わった人々を描く物語。
辻村深月の得意とするであろう、少しずつ登場人物がリンクする連作小説で、時代が変わっても脈々と東京會舘を通じて繋がっている群像劇が作品の醍醐味だ。
なぜこんなにも人の心を捉えて、感動を生み出す作品を提供し続けることができるのだろうか。
直木賞前も素敵だったが、受賞後も毎作素敵な物語を披露してくれる。
登場人物たちの会話一つひとつをとっても染み入るのは、創作を越えた何かがあるんだと思っている。
誰しもが東京會舘のお菓子を食べたくなり、その荘厳な佇まいを見たくなる一冊だ。
下巻からは新館となった東京會舘がお披露目となる。まずは激動の時代を生き抜いた上巻から、ぜひ楽しんでほしい。
東京會舘とわたし 上 旧館 (文春文庫) [ 辻村 深月 ] 価格:788円 |
小野不由美『十二国記 風の海 迷宮の岸』さぁ新作のために復習だ
- 作者: 小野不由美,山田章博
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: 文庫
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脈々と続く十二国記の中でも癒し系麒麟なのが泰麒だ。2019年10月の戴国の長編新作のためにも復習する人は多いだろう。
前作から遡っての物語だが、お馴染みのキャラクターも現れ、その世界観がより分かるようになっている。
十二国記の魅力の一つにその確立された世界観が挙げられる。よくこんな世界を想像できたなぁと感じ、その物語に触れることは感謝でしかない。
物語は10年という歳月を本来生まれた世界とは別の世界で過ごし、十二国へ戻ってきた戴国の麒麟、泰麒が成長する様が描かれる
ゆくゆくは王を選ぶという使命を知り、自身が使役する妖魔の存在など、この巻で十二国の世界の理を読者は知ることとなる重要な位置付けである。
麒麟同士の関わりもあり、のちの作品でも出てくる登場人物にファンとしては堪らないはず。
2019年には待望の新作が発売予定で、その物語は戴国だと予想されるため、戴国始まりの物語としてぜひ読んでおきたい一冊だ。
価格:680円 |