irodori_book’s diary

本を読む幸せとは作者の描く登場人物の考えが自分の考えにシンクロして陶酔するような感覚が稀にあること。一人でも多くの人に特別な一冊が見つかればいいと思うので、大切な本の紹介を続けます。

阿部智里『弥栄の烏』あっと驚くファンタジーの第1部完結

弥栄の烏 八咫烏シリーズ6

弥栄の烏 八咫烏シリーズ6

八咫烏シリーズの第一部を締めくくる、猿との最終決戦が描かれる本作は、前作の対を成す作りになっている。『烏に単は似合わない』『烏は主を選ばない』と同様に前作の裏で起こっていた出来事がわかり、凄絶な物語に驚かされた。
宮廷ファンタジーかと思った初作から、まさかここまでの物語に発展するとは誰が予想できよう。これまでの登場人物が生き生きと躍動し、運命に立ち向かう様と、最後のシーンは自然と泣けてくる。
第二部を始まるようで楽しみで仕方ない。

弥栄の烏 [ 阿部 智里 ]

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小野不由美『十二国記 白銀の墟 玄の月』死んだのは誰だ?生きてるのは誰だ?

白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)

日本で最も待ちわびていた人が多い作品なのではないかと思う。ジャパンファンタジーの最高峰の物語。

1巻に比べ様々な謎が散りばめられた巻だった。
とにかく何が起きているのか、何が起きたのかが、少しずつ少しずつ明かされる感じは本当に素晴らしい。
いま、物語の一番中心が明かされないまま、まわりから徐々に徐々に物語が進んでいく。中心に向かってぐるぐるとまわり、一つひとつの謎を拾いながら真ん中を目指しているような感覚だ。

戴国の現状が、旅路のなかでも見えてくる。
玉座にいない王と、想像を超えた荒廃に、麒麟と李斎はどのように立ち向かうか…11月に続くとか待ちきれない。

白銀の墟玄の月 第2巻 (新潮文庫 おー37-63 十二国記)[本/雑誌] (文庫) / 小野不由美/著

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小野不由美『十二国記 白銀の墟 玄の月』ファンタジー小説の金字塔

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

18年ぶりの新作。作家のなかでも多くのファンを有する十二国記だが、期待を裏切らない戴国の物語最終章に本当に涙した。当然のように登場するこれまでの主要メンバーに鳥肌が立つ。
険しい道のりに同じく旅する気持ちで読み進め、一体この国で何が起こっているのかを知る。
新たな登場人物と共にまずは果てなき旅から始まる一巻。
発売日に蝕が起きたと言われ、話題になった新作をぜひ堪能し、さらに続く二巻へ進んでほしい。

なにより文庫なので読みやすいですよ。
単行本にしないことがすごい。
商業的にもこれは売れる。



森見登美彦『夜行』不穏な夜行列車の旅をどうぞ

夜行 (小学館文庫)

夜行 (小学館文庫)

英会話スクールの友人たちと鞍馬の火祭へ出かけるところから物語が始まる。

10年前に失踪した友人と謎を呼ぶ銅板画、共通する不思議な体験を彼らは語っていく。作者が夜行列車に乗っているような気持ちで読んでほしいと語った物語は、不穏な空気感となかなか読み進められない不思議な読みごたえがあった。

森見登美彦自身もこれまでの作品『きつねのはなし』や『宵山万華鏡』などのような不気味な雰囲気を持つ作品を書こうと思って書き始めましたと言うように、どこか不穏。

設定からもっと青春感溢れる感じかと思ったが、百物語のようにも感じた。
やはり森見作品には惑わされる。

夜行 (小学館文庫) [ 森見 登美彦 ]

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川上弘美『パレード』センセイの鞄から続く物語

パレード (新潮文庫)

パレード (新潮文庫)

谷崎潤一郎賞の『センセイの鞄』の二人のある一日が描かれたボーナストラック的な一冊。

「昔の話をしてください」

優しくお茶目なセンセイが、ツキコさんにそうお願いするところから始まる物語。

たぶん、こんな感じだったのだろうと、川上弘美が描く二人の空気感が変わらず漂っている。

ツキコさんの幼い頃の不思議で苦い記憶が夏の風が吹くなかで語られる。

午睡という言葉が浮かぶのは僕だけだろうか。
センセイの鞄』読んだ方はぜひ。


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辻村深月『東京會舘とわたし 下巻』東京會舘へ行きたい

辻村深月は物事に意味を見いだすことに長けた作家だと思っている。

今作、『東京會舘とわたし』では戦前から脈々と続く會舘の歴史と関わる人々が鮮やかに描かれているのだが、過去に登場した人物があちらこちらに姿を見せる。そして、当時の発言や行動がどのような真意であったのかを明らかにしていく様子が本当にニクい。

物事には意味があり、それがストンと腹落ちしたとき(謎が解けたとき)人は驚きと共に感動をおぼえる。今作は會舘の歴史の積み重ねと登場人物たちの小さなミステリーからできていて、必ずや東京會舘へ訪れたくなる最高の一冊だ。

東京會舘とわたし 下 新館 (文春文庫) [ 辻村 深月 ]

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道尾秀介『月の恋人』がっつり直球恋愛小説

月の恋人: ―Moon Lovers (新潮文庫)

月の恋人: ―Moon Lovers (新潮文庫)

道尾秀介がテレビドラマのために書き下ろした小説。まさか道尾秀介がこんなにも直球の小説をかくのかと驚いたが、後に刊行されたエッセイに、テレビサイドとのやり取りが書かれており、無理したんだなぁと実感。

それでも恋愛小説としてオーソドックスな設定で楽しめるので、月9のラブストーリーが好きな方には読んでもらいたい。

道尾秀介が月9に寄せまくったが、どこか反抗した箇所がチラホラ見え隠れするのが、この作品の楽しめるポイントだ。

月の恋人 (新潮文庫) [ 道尾秀介 ]

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