irodori_book’s diary

本を読む幸せとは作者の描く登場人物の考えが自分の考えにシンクロして陶酔するような感覚が稀にあること。一人でも多くの人に特別な一冊が見つかればいいと思うので、大切な本の紹介を続けます。

阿部智里『弥栄の烏』あっと驚くファンタジーの第1部完結

弥栄の烏 八咫烏シリーズ6作者: 阿部智里出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/07/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る八咫烏シリーズの第一部を締めくくる、猿との最終決戦が描かれる本作は、前作の対を成す作りになっている。『烏に単…

小野不由美『十二国記 白銀の墟 玄の月』死んだのは誰だ?生きてるのは誰だ?

白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)作者: 小野不由美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2019/10/12メディア: 文庫この商品を含むブログを見る日本で最も待ちわびていた人が多い作品なのではないかと思う。ジャパンファンタジーの最高峰の物語。1巻に…

小野不由美『十二国記 白銀の墟 玄の月』ファンタジー小説の金字塔

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)作者: 小野不由美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2019/10/12メディア: 文庫この商品を含むブログを見る18年ぶりの新作。作家のなかでも多くのファンを有する十二国記だが、期待を裏切らない戴国の物語最終章に本…

森見登美彦『夜行』不穏な夜行列車の旅をどうぞ

夜行 (小学館文庫)作者: 森見登美彦出版社/メーカー: 小学館発売日: 2019/10/04メディア: 文庫この商品を含むブログを見る英会話スクールの友人たちと鞍馬の火祭へ出かけるところから物語が始まる。10年前に失踪した友人と謎を呼ぶ銅板画、共通する不思議な…

川上弘美『パレード』センセイの鞄から続く物語

パレード (新潮文庫)作者: 川上弘美,吉富貴子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/09/28メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (25件) を見る谷崎潤一郎賞の『センセイの鞄』の二人のある一日が描かれたボーナストラック的な一冊。「昔の話をし…

辻村深月『東京會舘とわたし 下巻』東京會舘へ行きたい

東京會舘とわたし 下 新館 (文春文庫)作者: 辻村深月出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/09/03メディア: 文庫この商品を含むブログを見る辻村深月は物事に意味を見いだすことに長けた作家だと思っている。今作、『東京會舘とわたし』では戦前から脈々と…

道尾秀介『月の恋人』がっつり直球恋愛小説

月の恋人: ―Moon Lovers (新潮文庫)作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/02/28メディア: 文庫この商品を含むブログ (10件) を見る道尾秀介がテレビドラマのために書き下ろした小説。まさか道尾秀介がこんなにも直球の小説をかくのかと驚いた…

川村元気『世界から猫が消えたなら』大切なものはなくなって初めて気づく

世界から猫が消えたなら (小学館文庫)作者: 川村元気出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/09/18メディア: 文庫この商品を含むブログ (28件) を見る川村元気原作の小説で、映画化もされて有名な作品。川村元気といえば、映画プロデュースのヒットメーカーだ…

辻村深月『水底フェスタ』黒辻村を堪能できる

水底フェスタ (文春文庫)作者: 辻村深月出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/08/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る辻村作品はよく黒辻村と白辻村とに分けられることがある。 おそらく感動できてとてもきれいな物語とドロドロの関係性を…

村田沙耶香『コンビニ人間』適合と不適合の狭間で

コンビニ人間 (文春文庫)作者: 村田沙耶香出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/09/04メディア: 文庫この商品を含むブログ (8件) を見る第155回芥川賞の受賞作品。コンビニで働くことで自身が存在することを確認できる女性の話と、一言で言えなくはないの…

小野不由美『十二国記 黄昏の岸 暁の天』新作の前に大いなる決意と感動を

黄昏の岸 暁の天 十二国記 8 (新潮文庫)作者: 小野不由美,山田章博出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/03/28メディア: 文庫この商品を含むブログ (14件) を見る各国の王と麒麟が協力する十二国はじめての取り組みに心が踊る。2019年の新作に向けて改めて読…

宮部みゆき『名もなき毒』宮部作品の真髄を見よ!

名もなき毒 (文春文庫)作者: 宮部みゆき出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/12/06メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (49件) を見る杉村シリーズの2作目として、今回もボリューミーな内容となっている。杉村の部署にたちの悪い…

辻村深月『東京會舘とわたし 上巻』建物の歴史と人々の営み

東京會舘とわたし 上 旧館 (文春文庫)作者: 辻村深月出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/09/03メディア: 文庫この商品を含むブログを見る実在する東京會舘を舞台に、戦前から現代までの働く人や式典や行事に関わった人々を描く物語。辻村深月の得意とす…

小野不由美『十二国記 風の海 迷宮の岸』さぁ新作のために復習だ

風の海 迷宮の岸 十二国記 2 (新潮文庫)作者: 小野不由美,山田章博出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/09/28メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 15回この商品を含むブログ (27件) を見る脈々と続く十二国記の中でも癒し系麒麟なのが泰麒だ。2019年10月の戴…

道尾秀介『カラスの親指』とっておきのラストを堪能しよう

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/07/15メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 20回この商品を含むブログ (50件) を見る映画化もされ、道尾秀介といえばこの作品を思い浮かべる人も多いと…

東野圭吾『希望の糸』関係者の思いが大渋滞

希望の糸作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/07/05メディア: 単行本この商品を含むブログを見る日本で東野圭吾さんを知らない人はあまりいないのではというのは、本読みの勝手な印象だが、これだけ多くの作品を世に送り出し、ドラマ化、映画…

梨木香歩『雪と珊瑚と』食の彩りと過酷なシングルマザー

雪と珊瑚と (角川文庫)作者: 梨木香歩出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2015/06/20メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る梨木香歩さんはとても自然味のある方だと思う。『西の魔女が死んだ』は今でも読み継がれる名作であり、それ以外…

岩井俊二『ラブレター』昔の恋は忘れられない

ラストレター作者: 岩井俊二出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/10/25メディア: 単行本この商品を含むブログを見る昔の恋に勝てる恋なんてあるのだろうか?男性で純度の高いラブストーリーを書かせたら右に出るものは少ないと思う岩井俊二のノベライズな…

角田光代『八日目の蝉』心に残る角田光代さんの傑作がここに

八日目の蝉 (中公文庫)作者: 角田光代出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/01/22メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 166回この商品を含むブログ (208件) を見る映画化もされた角田光代さんの傑作長編小説。 愛人の子供を誘拐し、自分の子として育て…

中村航『あのとき始まったことのすべて』それでもみんな愛していた

あのとき始まったことのすべて (角川文庫)作者: 中村航出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/06/22メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログを見る思い出すとチリチリと痛む昔の恋。大人になって再開した同…

小川洋子『博士の愛した数式』優しさに満ち溢れた愛の物語

博士の愛した数式 (新潮文庫)作者: 小川洋子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/11/26メディア: 文庫購入: 44人 クリック: 1,371回この商品を含むブログ (1054件) を見る事故の後遺症により、80分しか記憶を維持できない博士と、博士の家の家政婦となった…

白川紺子『後宮の烏3』機微に触れる感情に酔いしれる

後宮の烏 3 (集英社オレンジ文庫)作者: 白川紺子,香魚子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/08/21メディア: 文庫この商品を含むブログを見るシリーズ第3作目。 巻を追うごとに世界の歴史が少しずつ明かされる。 今回は新しい登場人物と、新たな敵も現れ、…

小野不由美『十二国記  東の海神 西の滄海』延国最大のピンチに王の采配が冴え渡る!

東の海神(わだつみ) 西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫)作者: 小野不由美,山田章博出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/12/24メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (27件) を見る十二国記的には3作目で、慶国、泰国、そして、今回は延国へと舞台…

小野不由美『十二国記 風の海 迷宮の岸』麒麟とは?王とは?物語の根幹がここに

風の海 迷宮の岸 十二国記 2 (新潮文庫)作者: 小野不由美,山田章博出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/09/28メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 15回この商品を含むブログ (27件) を見る前作から時系列としては以前の話でまだ陽子が十二国に来る前のお話。…

小野不由美『十二国記 月の影 影の海(下巻)』全ての始まり・最強のファンタジーの誕生

月の影 影の海 (下) 十二国記 1 (新潮文庫)作者: 小野不由美,山田章博出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/06/27メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 18回この商品を含むブログ (49件) を見る暗くて重い上巻を堪え忍び、最高の展開が待っている下巻。重要人…

小野不由美『十二国記 月の影 影の海(上巻)』これを読まずにファンタジーは語れない

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)作者: 小野不由美,山田章博出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/06/27メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 70回この商品を含むブログ (61件) を見る小野不由美さんの代表作にして、最高傑作『十二国記』シリーズの…

宮部みゆき『過ぎ去りし王国の城』ファンタジーと現実の狭間で

過ぎ去りし王国の城 (角川文庫)作者: 宮部みゆき出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/06/15メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る宮部みゆきさんは本当に様々な物語を提示してくれる。社会派小説からファンタジーまで幅広い。本作はそれぞれの…

行成薫『名も無き世界のエンドロール』一日あれば世界は変わる

名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)作者: 行成薫出版社/メーカー: 集英社発売日: 2015/02/20メディア: 文庫この商品を含むブログを見る学生時代の同級生がプロポーズ大作戦をすることに。そこのひまさかの仕掛けがあって…この作品で作者を知る人もいる…

道尾秀介『光』少年時代の冒険は永遠

光 (光文社文庫)作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 光文社発売日: 2015/08/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るある片田舎の町で暮らす少年たちの物語。 さよならをしなければいけない友達がいて、町にはいくつかの謎があって、と、郷愁を感じ…

道尾秀介『いけない』いったい誰が死んだのか?

いけない作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2019/07/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る4章からなる連作小説で、それぞれの章の最後に写真があり、その写真で真相が読み取れる作りになっている。ベースとなる物語はある街で起きた…