irodori_book’s diary

本を読む幸せとは作者の描く登場人物の考えが自分の考えにシンクロして陶酔するような感覚が稀にあること。一人でも多くの人に特別な一冊が見つかればいいと思うので、大切な本の紹介を続けます。

岩井俊二『ラブレター』昔の恋は忘れられない

ラストレター

ラストレター

昔の恋に勝てる恋なんてあるのだろうか?

男性で純度の高いラブストーリーを書かせたら右に出るものは少ないと思う岩井俊二のノベライズなのだが、多くの人は『ラブレター』を思い出すとも思う。

男性の描く男性は得てして女々しくなる場合がある。今回も女々しさが先行するのだが、相変わらずやさしい空気が、作品には流れている。

物語は、死んでしまった昔の恋人の妹との変わった文通(にもなっていないが)から、娘たちも巻き込んで、それぞれの思いを知るひとりの男が主人公だ。同窓会で再開したのは昔の恋人の妹だった。なぜか姉を演じる妹に疑問を感じながらも、ひょんなことから手紙を受け取り続けることになる。姉の死、子供たち、姉の結婚など、過ぎ去りどうしようもないことを知り、主人公は女々しくもいくつかの偶然に救われていく。

死は人を集める。愛されていた人ならばなおのこと。死から始まる物語は、どのように着地するのか。タイトルの意味はなにか。

コンスタントに作品を発表し続ける岩井俊二監督の映画原作ノベライズ。

ラストレター (文春文庫) [ 岩井 俊二 ]

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