irodori_book’s diary

本を読む幸せとは作者の描く登場人物の考えが自分の考えにシンクロして陶酔するような感覚が稀にあること。一人でも多くの人に特別な一冊が見つかればいいと思うので、大切な本の紹介を続けます。

阿部智里『烏に単は似合わない』宮廷ファンタジーと思いきや…

烏に単は似合わない? 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫)

烏に単は似合わない? 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫)

作者が史上最年少で松本清張賞を受賞した作品。

舞台は異世界の宮廷。
王(現時点ではまだそうではないが)の后選びで4人の女性が互いの思惑を抱えて争う宮廷ファンタジー…だと思っていたら…

何か裏では起こっているのは感じるが、何が起きているか分からない。そんななか皆が不安になり、読者にもその不安が伝染する。

はじめは后候補全員が同じ方向を向いていると思っていたけれど、四者四様の考え方や気持ちがあって、それがミステリーの様相となり、思わぬ方向に展開していく。

いわゆる女性の嫌な部分を出しつつも、それだけではない気持ちに共感と嫌悪があり、どんどん読めてしまう。

全てを読み終わったあと、それぞれの登場人物の見え方がガラリと変わってしまうのは本当に秀逸で、なにより作者が20歳でこの作品を書いたということに恐れ入る。

この作品の後続いていく八咫烏シリーズの第1作として、日本のファンタジー小説として新しい仲間ができた気持ちになる作品だ。

烏に単は似合わない【電子書籍】[ 阿部智里 ]

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