irodori_book’s diary

本を読む幸せとは作者の描く登場人物の考えが自分の考えにシンクロして陶酔するような感覚が稀にあること。一人でも多くの人に特別な一冊が見つかればいいと思うので、大切な本の紹介を続けます。

宮部みゆき『希望荘』人の悪意とやるせなさに打ちのめされたい

希望荘 (文春文庫)

希望荘 (文春文庫)

宮部みゆきさんのドラマ化もされた杉村シリーズの第4作目。

『誰か』『名もなき毒』『ぺテロの葬列』とこれまでの3作は大いなる序章であったかのようにして、今作からはいよいよ新展開となる。

平凡なサラリーマンが事件に遭遇する杉村シリーズから、探偵としての活動を始めた主人公の新たな物語が描かれる中・短編集となっている。

丁寧に事件や出来事の背景が描かれ、少しずつ真相にたどり着くストーリーテラーっぷりはさすがで、とにかく読み進めてしまう。

これまでを知らなくとも本作から入っても十分に面白いのがすごい。

しかし、もし、これまでの3作を知らなかったのであれば、この「希望荘」を通じて、過去の作品にも触れて、人の悪意、人間関係のやるせなさに打ちのめされてほしい。

それぐらいにとても濃密なシリーズになってきた。そして、杉村さんには、ただただ幸せになってほしい。