irodori_book’s diary

本を読む幸せとは作者の描く登場人物の考えが自分の考えにシンクロして陶酔するような感覚が稀にあること。一人でも多くの人に特別な一冊が見つかればいいと思うので、大切な本の紹介を続けます。

白川紺子『後宮の烏3』機微に触れる感情に酔いしれる

後宮の烏 3 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 3 (集英社オレンジ文庫)

シリーズ第3作目。
巻を追うごとに世界の歴史が少しずつ明かされる。
今回は新しい登場人物と、新たな敵も現れ、これまでの2作ほどではないにせよ、物語が動く。
徐々に不穏な空気が、主人公の寿雪のまわりで起き、そして、まわりの助けに、手を伸ばしたくなる。それがいけないと言われていたにも関わらず。

ついに巻頭には世界の地図が掲載され、寿雪の住む夜明宮のある都だけでなく、様々なエリアが登場する。それぞれの土地で伝承があり、寿雪たちにも影響を及ぼす。
これからの展開が本当に楽しみだ。

後宮の烏がすごいのは、各話で事件を解決しつつ、寿雪とまわりの人たちが徐々に関係を深めていくため、読み逃せない盛りだくさんな内容になっていることだ。

さらに今回は主要人物たちの過去がわかり、運命的に寿雪と関わっていることが示唆される。
関係性が示されると「ここまでつながるかー」とひっくり返る。

この作者は本当にすごい。
人の心をよく読み取り、おそらく分かりすぎるくらいに、人の仕草や言葉でその裏まで読み取れてしまうのであろう。
読んでいると、それが伝わる。
こんなにも心が触れる書き方ができる人も珍しいと思う。

早く、次出てほしい。

後宮の烏 3 (集英社オレンジ文庫) [ 白川 紺子 ]

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感想(3件)



小野不由美『十二国記  東の海神 西の滄海』延国最大のピンチに王の采配が冴え渡る!

東の海神(わだつみ)  西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫)

東の海神(わだつみ) 西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫)

十二国記的には3作目で、慶国、泰国、そして、今回は延国へと舞台が移ってきた。

陽子を助けた延国の王と麒麟の物語で、二人の出会いと、国の最大の事件に立ち向かう様が描かれる。物語は麒麟の延麒のもとれ昔の友人が現れ、会いに行き、そこから国を揺るがす事件に巻き込まれていくことになる。
王は、麒麟は、国を守ることができるのか?

延麒と、王である尚隆の絆はもちろんのこと、脇を固める各役職の王の部下が格好いい。
尚隆は一見事態を軽々しく扱って、的はずれな指示をだすが、実はそれは様々な布石を打っており、自分自身も解決に動き出す。飄々とした態度に部下はキリキリとするが、徐々に真意を理解し、一丸となる中盤から終盤は鳥肌が立つ。

延麒も、捕虜になりつつ自分の使命と王を選んだことに悩み続ける。もしかしたら、尚隆を選んだことは誤りではないが、このままで良いのか…。

地方から志から王への謀反を起こそうとする斡由
も、自身の欲望が徐々に明らかになることで、物語が加速する。

幸せを願う二人の少年の思いは…

ファンタジー好きな人にはぜひ読んでもらいたい十二国記の中でも屈指の名作である。


東の海神西の滄海 十二国記 (新潮文庫) [ 小野不由美 ]

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感想(26件)



小野不由美『十二国記 風の海 迷宮の岸』麒麟とは?王とは?物語の根幹がここに

風の海 迷宮の岸 十二国記 2 (新潮文庫)

風の海 迷宮の岸 十二国記 2 (新潮文庫)

前作から時系列としては以前の話でまだ陽子が十二国に来る前のお話。

前作を読んでいれば理解ができる国にとっての王と麒麟の関係が今作でも重要になる。
またしても突如十二国にやって来ることになった泰麒は自身の運命を知る。
自分は王を選び、国を興していくことになるのだが、そんな過酷な運命を受け入れ、王を選ぶことができるのか…。

のちのストーリーにも大きく関わる泰麒の物語。発売当初、まさかここまで壮大なストーリーになるとは思ってもおらず、何十年となって、ここから物語が再び動き出すとは…。

好きで良かった、十二国記
幼い麒麟の成長と新たな国の始まりの物語。

風の海迷宮の岸 十二国記 (新潮文庫) [ 小野不由美 ]

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感想(25件)



小野不由美『十二国記 月の影 影の海(下巻)』全ての始まり・最強のファンタジーの誕生

月の影  影の海 (下) 十二国記 1 (新潮文庫)

月の影 影の海 (下) 十二国記 1 (新潮文庫)

暗くて重い上巻を堪え忍び、最高の展開が待っている下巻。重要人物の楽俊の登場から物語は変わり始める。思い出すだけでも鳥肌が立つ展開に読む手が止められない。

誰も信じられなかった陽子に光が射し、なぜ自分がこの世界に来たのか、これまでのことが何だったのかがわかり始める。

一つのことに気づけば、全容が見える。

ある王の登場やケイキとは何者かなど、上巻を耐えたからこそ出会える感動がある。

陽子の最後の選択と楽俊のアドバイスが胸に染みる。待ち受ける過酷な運命にどのような判断をするのか、、最強のファンタジーをぜひ堪能してもらいたい。

月の影 影の海(下巻) 十二国記 (新潮文庫) [ 小野不由美 ]

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感想(36件)



小野不由美『十二国記 月の影 影の海(上巻)』これを読まずにファンタジーは語れない

月の影  影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

小野不由美さんの代表作にして、最高傑作『十二国記』シリーズの第1巻。現在も連載は続いており、ファンが多い。

誤解を恐れずに言うと十二国記が読みたいのに読めないから他のファンタジー小説を読んでつないでいるのではないかとさえ思ってしまうほどだ。

物語は、学校で馴染めずにいた陽子が見知らぬ男ケイキに連れられ異世界へと旅立つところから始まる。なぜ、自分は連れてこられ、この世界はなんなのか。
陽子は異世界でさ迷い、魔物に襲われ、人には裏切られ、徐々に追い詰められていく。

下巻に向けての助走ではあるが、暗くて重い。
這ってでも生き続ける陽子はこの先どうなるのか…。読み続ける先に希望があるのか、ぜひ挫折せずこれから始まる十二国の物語にどっぷりはまってほしい。

月の影 影の海(上巻) 十二国記 (新潮文庫) [ 小野不由美 ]

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感想(45件)



宮部みゆき『過ぎ去りし王国の城』ファンタジーと現実の狭間で

宮部みゆきさんは本当に様々な物語を提示してくれる。社会派小説からファンタジーまで幅広い。

本作はそれぞれの理由で生きづらさを感じている登場人物たちが、古城の絵の中に入れるという体験を通して謎を解いていく物語。

なぜ絵に入れるの?
あの子は誰?

まず何より表紙の良さからついつい手にしてしまうことで、所謂ジャケ買いがあるのではないかと感じた。数多ある本から手に取ってもらうだけでも大変なことで、宮部みゆきというネームバリューに更にプラスされた表紙イラストで、期待感が高まる。

読後感は良いのだが、宮部みゆきのファンタジーな作品が読みたいと思っていると少し違う。
かといって社会派作品を読みたいなと思ったらやっぱり違う。

それでも結局読んでしまうだけの魅力がある。
恐るべし…宮部みゆき

過ぎ去りし王国の城 (角川文庫) [ 宮部 みゆき ]

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行成薫『名も無き世界のエンドロール』一日あれば世界は変わる

名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)

名も無き世界のエンドロール (集英社文庫)

学生時代の同級生がプロポーズ大作戦をすることに。そこのひまさかの仕掛けがあって…

この作品で作者を知る人もいるのではないだろうか。伊坂幸太郎さんっぽい作風で、どんでん返しというか、伏線回収が気持ちいい。

まさかの展開のはずなのに読後感がいい。

名も無き世界のエンドロール (集英社文庫) [ 行成薫 ]

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