irodori_book’s diary

本を読む幸せとは作者の描く登場人物の考えが自分の考えにシンクロして陶酔するような感覚が稀にあること。一人でも多くの人に特別な一冊が見つかればいいと思うので、大切な本の紹介を続けます。

東野圭吾『希望の糸』関係者の思いが大渋滞

希望の糸

希望の糸

日本で東野圭吾さんを知らない人はあまりいないのではというのは、本読みの勝手な印象だが、これだけ多くの作品を世に送り出し、ドラマ化、映画化している日本でも指折りの作家界のヒットメーカーであることは間違いない。

そんな東野圭吾さんの令和最初の長編ミステリーが本作である。帯にも東野圭吾の最高傑作とまであって、ファンは待ち焦がれていたであろう。

冒頭、不幸な事件から始まる本作は、2つの出来事が絡まりながら進んでいく。一つは殺人事件、もう一つは主人公の家族にまつわる真実。事件のミステリー部分はあっけなく明かされるが、それよりも事件の背景で関わった人びとの切実な思いや相手を思いやる気持ちに胸がつまる。

それにしても、大きな出来事は2つなのに、たくさんの人たちの現在と過去、それぞれの思いが丁寧に描かれ、もはや大渋滞だ。しかし、押し寄せる感情の渦にまかれて、それが心地よい。

血のつながりのある親子、ない親子。それは過ごす時間と互いの絆により、問題とならない場合もある。一緒にいるということは奇跡のようなものだと感じた。

ちなみに、前情報なしで読むと、まさかの東野作品の登場人物が現れファンには嬉しい。

やはり、東野圭吾さんはエンターテイメントとして、本当に素晴らしい作品を提示してくれる日本屈指の大作家だ。

希望の糸 [ 東野 圭吾 ]

価格:1,836円
(2019/9/17 16:50時点)
感想(13件)