irodori_book’s diary

本を読む幸せとは作者の描く登場人物の考えが自分の考えにシンクロして陶酔するような感覚が稀にあること。一人でも多くの人に特別な一冊が見つかればいいと思うので、大切な本の紹介を続けます。

宮部みゆき『名もなき毒』宮部作品の真髄を見よ!

名もなき毒 (文春文庫)

名もなき毒 (文春文庫)

杉村シリーズの2作目として、今回もボリューミーな内容となっている。

杉村の部署にたちの悪いクレーマー社員がいたが退職による対応窓口として杉村が引き受けることになる。それは人の見えない毒を感じるようなことになる。

一方で杉村は連続毒殺事件にも関わり、のちに影響を受けることになる私立探偵の北見と知り合う。今後のシリーズの重要なポイントの一つとなる作品だ。

理解いただけないかもしれないが、この杉村シリーズは三島由紀夫の作品を読んだあとのような読後感を感じる。

杉村と義父の間には信頼というのとは少し違うのだが心地よい関係性がある。

二人で話すシーンが今回もあるのだが、なぜかそれが静謐な空気感を行間から醸し出している。

圧倒的な存在としても描かれる義父とのコミュニケーションのなかにも杉村の意志が感じられる。

最高の二人のやり取りをぜひ読んでほしい。


名もなき毒 (文春文庫) [ 宮部 みゆき ]

価格:972円
(2019/9/26 23:54時点)
感想(56件)